※現在の日本はYAGPの規模も大きく、海外からのバレエダンサーの公演数や海外からのバレエ指導者も多いが、国立のバレエ学校などの教育システムがなく、個人のバレエ教室に頼っているところから、最近、他の東アジア諸国の台頭が顕著になっている。
かつてはローザンヌ国際バレエコンクールにおいて、東アジア勢としては日本の独占場のようだったが、現在はビデオ審査通過人数は増えているものの他の東アジアからの参加者も増加しており、全体的な人種の割合の変化が数10年前から著しくなってきている。
もうしばらくすると、プリ・ドゥ・ローザンヌが始まる。
日本でも多くの出場者がこのコンクールに出場、入賞し、プロのダンサーとなって成功を収めているのを私たちは見てきた。その名前を挙げるとキリが無いし、周知の沙汰だと思うのでここで具体的な個人名を挙げていくのは割愛するが、パッと思いつく限り、国内外で活躍していたバレエダンサー、国内バレエ団のディレクターの多くがプリ・ドゥ・ローザンヌの受賞者である。
以前(40〜30年前くらい)はアジア人といえば、日本人しかいなかったのが、ここ最近は2000年以前と異なり、現在はヨーロッパの国々よりも東アジアからの出場者が大半を占めるようになってきた。
今年のローザンヌ国際バレエコンクールの参加者の国籍を見ると、日本13人、中国17人、韓国19人、アメリカ11人、その他の国は1人または2人の出場者の国が多い。
計81人。(ビデオ審査通過者以外も含む)
※数え間違えがあったら訂正します。
東アジアだけで、過半数近く。また、11人のアメリカからの出場者の中にも近年、アジア系は数名いる事は昨今の出場者を見ていているバレエファンは認知しているものと思う。
(アメリカの数学オリンピック代表者のそれと同じ。)
そして、出場者の割合を考えると上位4カ国だけで全体の7割を超える。以前は多かったヨーロッパの出場者は10人ほどで、後はブラジルが5人と、その他の南アメリカからの出場者も少なくないし、オセアニア勢が数名。
ただ、審査員には依然としてヨーロッパ系が占め、アジア系では中野綾子さんや私の中でずっとスーパースターだったヤン・ヤン・タンと言う2人のアジア人がいるに留まる。
中野綾子さんは1992年にローザンヌにおいて入賞され、バーセル劇場でプリンシパルを務められていたダンサー。私ごとだが、その当時のローザンヌのビデオは擦り切れるほど見たし、特にコンテ作品(当時は課題曲がなかった)の独特な世界観が好きだった。
現在はフリーランスで活動されている。
ヤン・ヤン・タンはダンスマガジンの 1994年8月号の表紙で目にしてその足の曲線美に釘付けになってから唯一無二の私のスターだった。
当時のローザンヌ国際コンクールといえば、クロード・ベッシー校長の毒舌。
下記はYoutubeで見つけたクロード・ベッシー校長の言霊。
パリ・オペラ座バレエ学校のクロード・ベッシー校長が毒舌を放っていた頃のローザンヌはそのコメントを聞くのがとにかく楽しみだった人も多いと思う。中野綾子さんがローザンヌに出場されていた時代はまだそう言う時代だった。
だが、こう言う辛口意見(毒舌)が通用する時代は残念ながらもうこないだろう。今は多様性のもと、身体的なことを言うと、反感を買う時代だから、コメンテーター側も相当気を使ってものを言わないと、クレームの嵐になってしまう。(クロード・ベッシー校長のコメントには顔の大きさ等、身体に対する言及も多かったと記憶している。)
言葉を選びつつでもこう言うコメントができる人がいないと言うのは個人的には寂しい気もするが、時代の流れだから受け入れるしかないのだろう。
話を世界のバレエにおけるアジア人の躍進に戻すと、以前からも私が他のブログで書いているように、現在ヨーロッパ各地ではコンテンポラリーが主流で、クラシックバレエは下火。
現在、クラシックバレエが盛んなのはアジア全般、ロシア、そして、YAGPのメイン国であるアメリカ。フランスに限っていえば、2ヶ月に一度の2週間のバカンスで休みになってしまい、夏休みは丸々2ヶ月の休みになる。だから、本気なのであれば自分自身で、バカンス中の講習会を入れる必要があるが、それも費用が嵩む。
最近、フランス国家認定ダンス講師の資格を持つ大学の友人と話していて、感じたのは結局、お金があれば親は「家族の時間」を優先させる場合が多い。もちろん、親子でバレエに本気に取り組む例もあるだろうけど、日本と比較すると圧倒的な少数派である。
また、(パリ・オペラ座バレエ学校などの大きな学校はそればかりではないと思うが…)バレエを教える際、子供たちの身体を触って修正する必要があるが、それすらも今のフランスではセクシャルハラスメントと捉えかねないので、ダンス講師たちも相当な注意が必要となり、講師たちの中には生徒に触れて指導することを諦め、口頭だけで、表面的に伝えるに留まる講師もいるのではないかとフランスのバレエの現状を伝えるいくつかのドキュメンタリー番組を見ていて思った。(どの講師も生徒との距離を保って、口頭だけで伝えているのが印象的だったし、ダンスを教える大学の友人の話とも一致していた。)
しかし、日本人として、東洋人として考える必要があるのは、ローザンヌ国際バレエコンクールに半数ほどいるアジア人の参加者の中で、どれだけの出場者が希望するバレエ学校、ないし、バレエ団に入れるのかはわからないという点である。
なぜなら、多様性と謳いながら、結局、ヨーロッパのバレエ団には「アジア人枠」と言うものが各地で存在しているし、見る側もどんなに技術があってもアジア人だらけのカンパニーを自国に求めてはいない。
これは差別ではなく、当たり前の事である。
以前(30年前)は日本人以外のアジア人のバレエダンサーは少なかったが、現代において出場者の半数近くがアジア人という現状をどのように捉えるか。ヨーロッパのバレエ学校入学と違い、バレエ団就職ともなれば、多くはない「アジア人枠」を巡って戦いが挑まれる。
その中で、精神的な支柱となるものが強い者だけが生き残れる世界。
安易に生き残れる世界ではない。
また、このローザンヌ国際コンクールに出場していない若きダンサーで、すでにヨーロッパ各地の有名なバレエ学校に在籍している人も多いと推測できることから、ヨーロッパのバレエ学校に奨学金で入れたとしても収入が安定しているバレエ団にアジア人が入るのには高い障壁がある。
特に女子は。
だからこそ、日本国内でも才能あるバレエダンサーに対する保障が急がれると思うのである。
日本という安全、清潔、自分が育った、親兄弟がいる国で暮らしたい若い日本人ダンサーたちは少なからずいると思う。
一般人同様、海外志向の子ばかりではない。
ローザンヌ国際バレエコンクールを羨望の眼差しで見ていた若い頃の自分とは異なり、今はそう言う才能のある子たちが収入を求めて海外だけを目指すのではなく、日本で就職し、日本で安定した生活ができるようにする選択肢の一つがあるべきではないかと考える。
一般の失業率も増えるだろうと言われているAI時代の2026年以降、時代の変化に対し、我々の脳内もシフトチェンジする必要がある。
1990年代前後のようにダンサーたち、各バレエ団自身が潤沢な国の補助金をもらって活動できていた時代の古い固定概念だけに執着していれば、補い切れない現在の負担は各ダンサーに当然のことのように分散され、「踊れる場所があるだけで幸せだと思え。」と言うやりがい搾取的な傾向や日本国内の風潮が変化することはないだろう。
繰り返しになるが、バブル成長期の豊潤な文化補助金を得て現在も成り立っている日本の古い体質のバレエ教室、ないしバレエ団を営んできた人たちの中にはその負担を利用者=未来の若手ダンサーに練習生としての場所を与える代わりに負担を求め続けることを当然だと思う人も少なくない。
しかし、私が経験したフランスのバレエ教室、デンマークのバレエ教室では、共に子供たちの参加する個人のバレエ教室の発表会であっても、地域企業からの寄付、地域行政の文化補助制度利用などで賄っているため、発表会費用の親負担はほぼゼロであり、子供たちのバレエがどんなレベルであっても逆に、観客が日本円にして1000円から3000円ほどの負担をするのが一般的である。
その点、日本にはバレエの発表会に寄付という概念はないし、よっぽど高いレベルのバレエ教室の発表会でなければ有料で観客に来てもらうという概念がないところが多い。
また、たとえ無料の発表会であっても子供達の努力を考慮せず、独自の辛口意見を述べる人が多い現実がある。
ヨーロッパの概念を日本にそのまま持ってくることは到底不可能だが、日本のバレエ界携わっている力のある先生たちが旧時代から今も続く古きしきたり、古い概念を刷新し、新しい未来の若者に繋ごうと努力することはできる。
それはバレエの先生一人一人が自分のことだけではなく、未来に向けた日本のバレエ界全体の体質改善を目的として立ち上がる必要がある。
ただ、それには各々のバレエ講師の協力関係が必要になってくるのだが、今の殺伐とした日本バレエ界の状況を考えるとその協力、共に未来を明るくするという努力が一番難しいのかもしれないと思いながら、3週間後に迫るローザンヌ国際バレエコンクールのことを散歩待ち中の犬に睨まれながら考えた。

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