🩰🇩🇰バレエの優美さとデンマーク家具の流線美。機械では見出せない魅力

普段のバレエや子供達の学校とは全く異なる椅子の話。
バレエ以外に、私は歴史や哲学が好きなのだが、「椅子」はバレエと並んで私の最大の興味の一つでもある。ただ、専門家ではなく、ただの椅子好き。趣味。特にデンマークの椅子。

日本では多く、「北欧家具」と言う。

でも、私の中ではフィンランドデザインとデンマークデザインは全く違う。それは「北欧」の有名なものが全く異なるのも同じ。北欧をいっしょくたにしてはならない。

ムーミンはフィンランド、長靴下のピッピはスウェーデン、レゴはデンマークで、ビョークがアイスランド。

デンマークはその他にアンデルセンやシェイクスピアの悲劇ハムレットの舞台となった城がある。他にも多くの名所があるが語り出すとデンマーク愛が止まらないのでここでやめておく。

デンマークは小国ながらデザイン性の高い家具でも有名で、日本でもその存在は多く知られている。

私は特にミッドセンチュリー時代(60年代前後)の家具、さらに絞って「椅子」が好きだ。

なぜ椅子が好きかというとその流線形が美しいと思うから。

バレエに通づるところがある。

美しいライン。

特にハンス・ウェグナーの椅子が好きでその写真集を眺めてるだけで幸せな気分になれる。それはその流線美が特にバレエのラインと似てると思うから。

私が以前、日本で所有していたのはYチェアだが、本当にずっと欲しかったのは1955年にヨハネス・ハンセン社から出されたスヴィーヴェル・チェア。椅子の足にはタイヤがついていて可動式のもの。(今でも欲しい…)

背もたれ部の曲線美、人体の背骨に合うように設計されたハンス・ウェグナーらしい機能美も兼ね備えた椅子。20年ほど前に本で見つけて、どうしても欲しくて新宿のコンランショップというところにわざわざその椅子を見に行ったのだが、見た瞬間、買えないことが分かった。

当時の価格で100万円。

椅子一脚に100万円はさすがに出せなかった。

それ以外にも彼の椅子は座り心地のいい椅子が多く、特に有名なのは1949年に同じくヨハネス・ハンセン社から出された”The Chair”。この椅子がなぜ有名かと言うと、1960年のジョン・F・ケネディとニクソンの大統領選のTV討論会で使用されたから。

ハンス・ウェグナー自身も「初めて自分の良さが出た椅子」と語るくらいの自信作だったらしい。背もたれ部の流線形が美しく、包み込むようなデザインとなっている。彼はユラン半島の職人の街、トゥナーという街で生まれ、14歳で家具職人見習いとなり、15歳で初めての椅子を製作した。

椅子とバレエ。

全く異なるものではあるけれど、そこには「流線美」と言う共通点がある。それはル・コルビジェの建築物の内部にも共通していると思うが、その話は横に置いておく。

バレエダンサーが見せるアラベスクや身体の流線美は芸術そのものであるし、こういう「名作椅子」と呼ばれる椅子達も芸術であると思う。

ハンス・ウェグナー自身が自分は平均的なデンマーク人男性の体型だから、自分が座り心地がいいと思った作品は大抵のデンマーク人男性が同じように”心地が良い”と感じると語っていたが、我が家にあったYチェア、当時120cmほどしかなかった次女には不評だった。

なぜなら、子供にとっては座面や背もたれの曲線が大きすぎて全くと言っていいほどしっくりこなかったのだ。私にとっては(デンマーク男性ほどの体格は全くないけど)、かなり座り心地のいい椅子で、何時間座っていても疲れなかった。

デンマークには他にも多くの有名な家具職人、並びに建築家がいる。

私が一番日本で有名だと思うのは建築家でもあるアーネ・ヤコブセン(スワンチェアやオーフス市庁舎の建築で有名)。

そして、ヴェルナー・パントン、コーア・クリントやフュン・ユールやポール・ケアホルムにボーエ・モーエンセンが特に有名。

ハンス・ウェグナーの親友であったボーエ・モーエンセンの革張りのスパニッシュチェアにも憧れを持っていたけれど、当然、買えなかった。(80万円くらい…。)

名作椅子は基本、一般人には高嶺の花。

トップクラスのバレエダンサーも高嶺の花。

バレエも名作椅子もトップクラスの芸術となるとその価値はグンと上がるのが面白い。

椅子は日常使用するものであって、現代では機械化された工程で作られたものがほとんどで、IKEAなどで名作の似たようものを見かけるが、その値段は驚くほど安い。

今、フランスの家で使用している椅子はアーネ・ヤコブセンのアントチェアに似せているIKEAで購入したものだがその値段は一脚当たり、本家の1/6ほど。全く別物である。

名作椅子の重厚感と一連の機械化された流れの中で作られた椅子とではやはり何かが違う。

先日の大学の授業で学んだ「ダンスと機械」の中では1920年代の振付家達が好んで機械をダンスの中に取り入れようとしていた。

授業内に見た一つの作品「バレエ・メカニック」には無機質な機械音と人間の温かみの対比が作品として生み出されており、当時としては相当斬新なアートだったのだろうと思わずにはいられなかった。

名作椅子と呼ばれる作品の中にもアメリカ人のイームズ夫妻が生み出したイームズチェアと呼ばれる椅子は機械式で生み出された。

シェルチェアなどは目にした事もある人が多いと思うが、美しいデザインを保ちながら機械の無機質さも感じられる作品である。

伝統工芸としての椅子、生産ラインの中で作られる椅子、様々な素材の名作椅子があり、そこには家具職人達の挑戦があった。

バレエにおいてもドイツ人のマリー・ヴィグマン(1886-1973)が新しい風をダンス界にもたらしてから多くの振付家によって様々な挑戦が行われた。

日本の舞踏家、土方巽(1928-1986)も当時のヨーロッパに大きな影響を与えたうちの1人で、「Buto」は大学の授業でも度あるごとに登場する。

※土方巽自身はヨーロッパに招待された事はあるけれど、渡欧はしていない。

伝統と新しいものの融合が折り重なって今がある。

椅子という、ただの座るだけの存在の家具もどう見るかによってその存在感が大きくも小さくもなる。

バレエにおいて言えば、生活の必需品ではないとしてコロナ禍では規制の対象となっていたが、個人的にはそういう時こそアートが必要なのではないかと思っていた。

子供達の心の安定を図るためにも、バレエがそこにあるというのは意義があったのではないかと思っている。

名作椅子にしてもバレエにしても人の心を豊かにしてくれるもので、知らない人にはどうでもいいものである。

人間はどこにこだわりを持つかで物の見方が変わるのが面白いとその名作椅子の本を眺めながら思う。

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