「合格のために最も必要なのは母親の狂気と父親の経済力」
滅多にテレビを見ない私が最近(数年前だけど)見た中学受験をテーマにしたドラマ、「2月の勝者」からのセリフ。
よく芸能人の人が塾は課金ゲームと言っているのを耳にするけれど、今の日本バレエ界の体質は塾のそれに似ている。
いずれも共通するのは、
上を目指したければ、集中レッスンを受けたければ、課金。
でも最近、いろんな人達の書いているものを読み漁っていて人間の心理というのは面白いと思った事に、「バレエ教室の選び方」。
塾は勉強を学ぶ場所。
反して
バレエ教室はバレエを学ぶ場所、のみならず、そこで保護者はバレエの先生達に子供の教育も希望する声が多い。
それはフランスでも議題に上がる「ヌヌ」(ベビーシッター)に求める要件に似てる。
本来赤ちゃんのお世話だけするのが仕事がヌヌだけど、忙しいパリジャンのママ達はそこに語学や教養、作法などをヌヌに求める事が増えて来てるというもの。
だからヌヌが資格が要らない単なるベビーシッターではなく、高学歴だったり、多言語話者だったりする事で職が得やすくなるという記事を読んだ。
例えば中学受験を目指す塾だったら分かりやすく、合格率が高いところを選ぶ基準にすると思う。
なぜなら塾は「教育」をする場ではなく、あくまで「講師」としてお客さんに受験合格という対価としてお金払ってもらういわゆるサービス業だから。
対して、「バレエ教室の選び方」へのアドバイスには
「バレエの先生が子供の成長を促してくれる」
「子供の人間形成をしてくれる」
「躾をしてくれる」
バレエ教室と言う。
本来、バレエの先生もバレエ講師で学校の先生と言う立場の「教師」ではない。
「講師」。
バレエを教える事で対価としてお金を頂く。
でも、求める方は安くないお金を払うなら、子供の教育もしてもらいたいという事。
冷静に考えてると2つとも同じサービス業で、同じく講師。
バレエの先生は経験は豊富な人が多いのに対して、
塾講は大学生が多い。一流大学の。
大学卒業して塾講師をバイトじゃなくて本職とされている中には某塾の講師のように東大卒の方をはじめ、超一流大学の先生達も多くもいらっしゃったりする。
一方、バレエ講師は中卒、または高卒がめちゃくちゃ多い。(かく言う私も高卒。)
バレエの先生で大卒の先生はごく稀だと思う。逆に塾の講師で中卒、高卒は少なくとも私は周りで聞いたことがない。
そして、実際のところバレエの先生の中にはヒステリックな先生もいらっしゃれば、「一般常識とは?」と問いたくなるような先生も少なくない。
理不尽である事は日常的だったりもする。バレエ講師はつまり、神様ではなく、ただバレエを直向きに学び、それを伝えて行く事をしているだけ。
決して人間性が完璧な人たちがバレエの先生になってるわけではない。私も含めて。
また、私が何十回も書いているように、日本の場合、バレエ講師と言うのは資格も何も持たない、バレエ知識ゼロからでも「私はバレエの先生です。」と言えるのが今の日本の制度。
これも塾講師と同じだと思う。
最初に書いた2月の勝者のセリフ。
「合格のために最も必要なのは母親の狂気と父親の経済力」
と言う言葉はバレエにも塾にも合致する。
同じくらいの年齢の子(小6前後)をバレエで言うとコンクール入賞とスカラーでの留学への切符。
入賞できないとなると、簡単にバレエ教室を変えてしまう保護者が多い現実。
そうではなく、自分の先生を信じて続ける保護者生徒もいるけれど、ビックリするくらいこの年代のトップクラスの子達には移籍が多い現実。
塾も同じで、2月の勝者の黒木先生のような優秀な先生がおらず、毎月の模試で結果が伸びなかったら塾を簡単に変えると思う。
バレエよりももっとシビアな世界だと思う。
でも、親も講師も「目指すところがある」という目的は一緒なのに、そこに求める負担の大きさは塾講師とバレエ講師はだいぶ異なる気がする。
小6ともなれば、毎月5万円はくだらない塾費用。トップクラスとなれば、更にかかる中学受験費用。
6年生の1年間(前年の2月からその年の受験まで)で、ゴールデンウィーク合宿から始まって、夏期講習、特別講習、冬季講習などの他、優秀な子には更に特別クラスが用意されている。
100万円は超余裕でかかると言う話もよく聞く。そう意味で課金ゲーム。
バレエのコンクールに向けての費用にしても、その後の遠征費にしても青天井。
発表会の主役ともなれば、一昔前は100万円というところもあった。(今はさすがにないだろうけど。)
だけれど、塾は子供の教育を求めるところではなく、勉強を学びにいくところ。保護者は基本、塾に勉強以外は求めない。
一方で、バレエ教室はバレエと人間形成を望む保護者の多さに驚く。なぜ小さな子供達が「楽しく踊る」「自己肯定感を高める」「非認知能力を伸ばす」という目的を許容しないのか。
4、5歳の子供達に規律制の中で「躾」「厳しさ」を求める保護者が多いのは現代の幼稚園の在り方(最近はお勉強幼稚園がのびのび育てる幼稚園よりも人気があるように思う。)からも理解できるけれど、現代の子供が息抜きできる場所はどこなのか。
また、本来、教育というのは家庭で行うものだと私は思っているけれど、最近の日本ではそうではなく、外部に委ねるものなのか。
例えば、パリ・オペラ座バレエ学校のような寄宿制の学校で暮らし、バレエを学び、座学も学ぶのであれば話は変わってくる。
そこでは人間形成をはじめ、親以上にそこにいる大人の存在意義が大きくなり、その身近な大人から吸収するものが大きくなるに違いない。
また、フランスバレエの先生達は日本のバレエの先生たちと違い、フランス政府認定ダンス講師国家資格を持っている(だからと言って人間として立派かと言えば別問題)し、座学はそれぞれ塾講師ではなく、学校教師の資格を持つ先生達が通常の中学校、高校生に学校で指導するようにそれぞれの専門分野を教えている。
そして特にここが重要になってくるとは思うが、寮に帰れば寮母さんが子供達のいざこざなどをまとめたり、話したりするだろう。
それぞれの役割分担ができている土壌の上に、そこに子供達のバレエダンサーとしての人間形成が託されている。
また、下記は15歳でロイヤルバレエスクールに入学し、その後19歳でプロとしてノルウェー王立バレエ団でプリンシパルとして長年活躍されていた西野麻衣子さんのドキュメンタリー映画。
費用を捻出するためにご両親が家や車を売ってロイヤルバレエスクールへの支払いに当てられた話は有名。
彼女は172cmという長身に恵まれていて、その上で努力され、その後の活躍はこの映画にある通り。
15歳で1人海外に旅立ったけれど、それでもお母様のチャンスを逃さず、挑戦することに意義があるという姿勢に大きく影響を受けていると話されている。
何が言いたいかと言うと、結局、子供の人間形成は「親」または「保護者」がするもので、バレエ教室を探す段階で「作法・礼儀」や「規律制」などをバレエの先生に求めるのはバレエの先生達への負担が多過ぎやしないか?と思う。
子供達が「楽しくバレエをする」だけでは満足できず、それにオプションとしてバレエ教室に「英語力」「コミュニケーション力」「人間形成」などを求める家庭が増えてきているのかもしれないとygp japanの技術力やそれに参加する日本のバレエ教室数との比率を考えて思った。(塾にそこまでの事を求めるだろうか?)
バレエ人口の減少と反比例して
バレエ技術の向上を
求める家庭が多い現実。
そして、一昔前にあった日本人の義理人情は失われ、数年経って結果が出ないと育ててもらったバレエ教室を変える事も厭わない現代的な思考が、「楽しく」「のびのびと」という言葉を遠のかせ、それを寧ろ「甘さ」「だらしなさ」とすら言い換える「大人(保護者)の目の厳しさ」が現在の日本のバレエを生み出しているように思う。
日本のバレエが向かう先はどこなのか。
保護者のバレエを子どもに習わせる時の重要視する点とバレエの先生の技量、力量。
バレエを教える側の人数が増え続け、子供が減る日本。
生き残りがますます厳しくなる現実が待ち受ける未来へのバレエ講師各々の展望とは。
私個人としては、
子供の子供時代を奪わないためにも、「本格的な」バレエよりも小学生低学年の頃までは、音楽性や運動能力、自分との向き合いの中で保護者にも先生にも無理のない「楽しくバレエ」「笑顔でバレエ」「仲間と協力する事を学ぶバレエ」ができる教室が増えたら日本のバレエを学ぶ子供達の低学歴、学業機会の喪失問題、バレエの先生達の負担、プレッシャーも軽減されるんではないかと思っている。
その中でバレエの先生と信頼関係を年数をかけてゆっくり築きあげ、人生の先輩としての意見を聞いたり相談したりすることは多いにあり得ると思う。
そのため最初に重視すべきは長期間の「信頼関係」を築ける先生か否かが重要ではないだろうか。
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