バレエと現実の社会は時として遠く切り離されている。
芸術家は社会情勢とは
隔たりを持って生きてこそ
芸術家であるという人もいる。
しかしながら、今日本が直面している社会問題はバレエダンサーもバレエ関係者も考える必要があるのではないかと思う。
少子化問題、バレエに取って代わるダンスの参入…など。
また、戦争とバレエは別の世界のものというバレエ関係者もいる。
でも、
なぜ、現在、ウクライナのバレエダンサーの何人かが国を守るために戦地に赴いて命を落とさなくてはならなかったのか…。
また、日本のバレエ界でバレエをやっている人なら必ず名前を聞いたことがある「日本バレエの母」と言われるエリアナ・パブロワ(1937年に帰化)は慰問公演先の南京で病に倒れ、1941年、中央陸軍病院にて帰らぬ人となった。
日本軍の応援のために訪れた旅先での突然の死だったため、「軍属の戦病死」として鎌倉市が彼女のために市葬を行ったというバレエ界の歴史がある。
80年前の世界状況よりも現在の世界情勢の方がもっと複雑である。
今は日本の多くの優秀なダンサーが世界に羽ばたく。
世界情勢に無知では、自由にバレエを踊ることすらままなくなってしまうかもしれないと私は考えている。
なんのために踊るのか。
自分のため?
そこにいる観客のため?
未来のバレエダンサーに輝く未来があるように、日本を取り巻く世界の動きを注視する力を持ち、自分が羽ばたける場所を見つけていけるように今の大人がしっかりしないといけないと思う。
そんな事を考えるここ最近、移民問題を考えながら、日本にすでにある問題の一つ、クルド人問題のことを思った。そして、そこから、フランスの大学で出会ったクルド人の宗教がゾロアスター教だったことを思い出し、Googleで
「クルド人 ゾロアスター教」
と調べたら、Queenのフレディ・マーキュリーが出てきた。個人的にはモーリス・ベジャールの作品で有名なクイーン。それ以外のことは何も知らない。
何かと思って読んでみたら、
「インドに生まれたゾロアスター教徒の両親を持ち、フレディ自身はアフリカのザンジバル(現在タンザニア)で生まれた。」
と書かれてあった。
彼自身はインドの英国式寄宿学校で学んだ後、再び家族のいるザンジバルに戻ったが、革命により彼が17歳の時に家族でイギリスに移住したということだった。
Queenといえば、バレエファンなら誰でもモーリスベジャールバレエ団の「Ballet for Life」で知っていると思う。興味があるか、ないかは別にして日本でも最近だと2021年に公演されている作品だし、とにかくモーリス・ベジャールの振付とQueenの音楽が融合して現代における偉大な作品の一つになっている。
そのクイーンのヒット曲を生み出したのがフレディ・マーキュリー。
出生名はペルシア語でファルーク・バルサラというらしい。45歳でAIDSによって亡くなるまで病気のことはバンドのメンバーにさえ知らせていなかったというから驚きだ。
今回、ふとしたキッカケで私が知った事として(今回調べるまで彼について興味がなかった)フレディ・マーキュリーは
- インドで育った後に、17歳で宗教的、民族的な問題のためイギリスに移住(イギリス国籍は元々持っていたようだけれど)
- 現代では少数派のゾロアスター教の教徒(葬式もこれに則って行われた)
- LGBTQIA+
バレエ界でも偉大なダンサーの数人はAIDSで亡くなっていたりするし、バレエと政治と宗教とLGBTQIA+問題は切っても切り離せない問題なのだと改めて考えさせられた。
彼はイギリス国内で育ってはいなかったけど、英国パスポートは保持していたようだから、移民ではないのかもしれないけれど、イギリスに元々いた人たちと肌の色も宗教も違う。そして、ゾロアスター教ではLGBTQIA+的な発想は禁止されているという資料も読んで、マイノリティの中のマイノリティ、逆境の中で世界に名を残した人物なのだと彼の死から34年経って、今更ながらに彼の人生に興味を持った。
バレエと多様性。
バレエと戦争。
バレエと宗教。
バレエと政治。
それぞれ全くバレエとは関係ないような事柄だけれど、実際、世界は繋がっている。それは同じくモーリス・ベジャールの作品「M」でもみて取れるように、三島由紀夫文学があり、日本文化があり、1968年の学生運動の時代に翻弄された世界がある。
今の複雑な世界において繋がっていないものなどなくて、全てが複雑に絡み合っている。
表面のキラキラした部分だけを切り取ってみようとする事は簡単で、楽しいかもしれない。
特に、今の日本のバレエ界、キラキラしたものだけ、成功している人の例だけを目にして他は見ないようにする人が多い現実がある。
けれど、自分の人生で行き詰まった時に、物事の奥深さを経験していくことになる。そんな時になんの知識もないまま私のように大した実力もないのにバレエのことだけしか考えてないようになってしまうと、後々苦労することも多い。
だから、今のバレエに携わる若い人たちには今の日本の政治にも人種問題にもしっかり耳を傾けて自分の考えを持ってほしい。経験値を上げて欲しい。
特に海外で活躍するようなバレエダンサーを願う人たちには日本人である以上、「人種問題」は人によって、場所によっては大きな問題となってくる。
この世の中に、人種差別がない場所なんてないのだから。
パリ・オペラ座バレエ学校の校長先生が以前、ARTEという番組の中で語っていたのが印象的。(現在非公開になっている動画。)
「いずれ、バヤデールが統一されない日が来るのかもしれない…」
と。
バレエはイタリアからカトリーヌ・ド・メディシスがアンリ2世と結婚する際にフランスに持ち込んできた16世紀の文化。そこから、ルイ14世が基盤を作り…と、ヨーロッパ、殊に白人の長い歴史の中で築き上げられた踊り。
日本には能や歌舞伎があるように、その土地の風習、その土地の人間の骨格にあった踊りが作られ伝統として残っている。
その土地のことを学び、その土地の歴史・文化を学ぶことでバレエにつながることも多い。今世界で起こっている世界情勢を他人事とせず、目先のことだけにとらわれず、自分の未来のためにの気づきになるような学びをしていく人たちが増えたら日本のバレエ界も前進し、いい意味で大きく変わっていくのではないかと思う。
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